魔法使いの一日
「そっそっそそそ、そんなことないって!!」
少年はかなり吃りながら、ブンブンという音がなりそうな勢いで首を横に振った。
「じゃあ何さ。あんた自分で魔法使いだって言ってたのに、信じてもらえなくても良いの? まぁそれでいいなら、一生へっぽこ手品師って呼ぶけど」
私がそう言うと、少年はきょとんとした表情を見せる。
「はて、俺そんな事言ったっけ? 歳のせいか記憶が」
「だからそれがワザとらしいって言ってんだよぉ――――!!!!!」
私は拳に有りったけの力を込め、少年の顔面を殴った。……と思ったのに、何故が人を殴ったような感覚がしない。何ていうか、壁を殴ったような……。
よく見ると、少年の顔の前に透明で壁のようなものが現れていて、私のパンチを防御していた。
「ふぅ。危ねぇ危ねぇ、強度上げといてよかったぜ。亜梨珠のパンチは計り知れないからなぁ。あーあ、強度上げても罅がはいってら」
少年はそう吐くと、顔の前にある壁を消し、私の足を退かして起き上がった。
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