魔法使いの一日


「そっそっそそそ、そんなことないって!!」


少年はかなり吃りながら、ブンブンという音がなりそうな勢いで首を横に振った。


「じゃあ何さ。あんた自分で魔法使いだって言ってたのに、信じてもらえなくても良いの? まぁそれでいいなら、一生へっぽこ手品師って呼ぶけど」


私がそう言うと、少年はきょとんとした表情を見せる。


「はて、俺そんな事言ったっけ? 歳のせいか記憶が」

「だからそれがワザとらしいって言ってんだよぉ――――!!!!!」


私は拳に有りったけの力を込め、少年の顔面を殴った。……と思ったのに、何故が人を殴ったような感覚がしない。何ていうか、壁を殴ったような……。


よく見ると、少年の顔の前に透明で壁のようなものが現れていて、私のパンチを防御していた。


「ふぅ。危ねぇ危ねぇ、強度上げといてよかったぜ。亜梨珠のパンチは計り知れないからなぁ。あーあ、強度上げても罅がはいってら」


少年はそう吐くと、顔の前にある壁を消し、私の足を退かして起き上がった。







< 31 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop