魔法使いの一日


「へー、人が折角名前を付けてあげたのに文句があるって言うの?」


私が怪しい笑みを浮かべながら話し掛けると、ソラはギクッと言う効果音が鳴りそうなくらいの反応をし、顔を青ざめた。


「そ、そんなわけないだろ……もう嬉しくて嬉しくて涙が出るくら」

「1ヶ月おでん抜きね」

「待ってください亜梨珠様!! 一週間なら未だしも1ヶ月は無理!! 死んじまう!!!」


ソラはある意味違う涙を流した。


「じゃあ一週間は平気って事ね?」

「えっ!? いや……そんなことは……」


ソラは、この先の言葉が見つからずしどろもどろになっている。そんなソラを見てため息を吐く。


「ウソだよ。おでん抜いただけで餓死されたらたまったもんじゃないからね」


その代わり、今度部屋散らかしたらマジでおでん1ヶ月抜きにするからね、と釘を刺し、台所に向かう。ソラははいっ!!と背筋をピンッと伸ばし敬礼した。


「あ、そうそう」


台所に向かう途中、言い忘れたことを思い出し立ち止まる。そしてソラの方に顔を向ける。


「改めて、これからも宜しくねソラ」


私はソラに笑顔を向け、台所に向かった。


この時私は、この不思議な日々が更なる崩壊を辿ることを全くもって予想していなかった。


いや、例え予想していたとしても避けられなかっただろう―――……。







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