魔法使いの一日
第二章 賑やかすぎるのも問題だよね の巻き

一.転校生と転入生の違い



ミーンミーンミーン……


夏。


この季節になると、お決まりの蝉の泣き声が嫌でも聞こえてくる。
それが耳元で鳴いているわけではないのに、耳元……てか耳に張りついて鳴いているのではないかという錯覚に陥ってしまうほど、煩い。


「あじぃ〜〜てか、蝉煩〜〜い……」


その蝉の鳴き声+夏の暑さと、あのじめじめした空気のせいで、ついさっき学校に着いたばかりなのに机に突っ伏しさっそくばてている、私こと藤代亜梨珠、16歳。


「学校来て早々ダウンってどうよ。あんたそんなんで一日乗り切れるわけ?」


と、呆れた口調ながらもうちわで扇いでくれているのは東城雪(とうじょう ゆき)。
どことなく大人の雰囲気を漂わせ、夏の強い日差しにも焼かれない白い肌を持つ美人な幼なじみだ。


「無理……。てか何で雪はそんな涼しそうな顔してるの? やっぱ名前が雪だから暑くないの?」

「くだらないこと言ってんじゃないわよ」


ペシッと頭をうちわで叩く。痛くはないけど、無意識に叩かれた場所を手で押さえる。


「あーもー暑すぎっ!! なんでこの学校にはクーラーが無いわけ!!? 可笑しいだろ!!!」

「県立高校にクーラーを期待することが間違いだから。そんなにクーラーがある教室がいいなら、私立にでも行けばよかったじゃない」

「えーヤダよー。私立は無駄にお金が掛かるし……、どうせだったら雪と同じ高校がよかったし……」

「あんた変なところでケチるよね」

「あれ? 何か今ちょっぴり感動するようなこと言ったのに無視ですか?」


それでも雪は無視を通し、私をうちわで扇ぐ。雪は昔からそう言う奴だってのは知ってるけど、やっぱりちょっぴり悲しかったりする今日この頃。








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