奏―かなで―
「今の娘、良かったんじゃない?
歌も上手いし、何より可愛い。」
プロデューサーの言葉に綾瀬は苦笑した。
「綾瀬は手厳しいなぁ〜。」
グググッと伸びをする。
「次の人どうぞ〜。」
「失礼します。」
ガチャリ、扉を開けた。
あたしの瞳に映ったのは、目を見開いた綾瀬の姿。
「詩花!?」
綾瀬のすっ頓狂な声に、面接官が全員綾瀬の方を向いた。
「何、知り合い?」
「あ…、はい…。」
言いながら、綾瀬はあたしを窺うように見た。
「彼女の歌は?聞いたこと無いのか?」
「あぁ…、無いですね。
俺ばっかり歌ってたから。」
眉を下げ、懐かしそうに微笑む綾瀬に、なんだか切なくなってきた。
「じゃあ、歌ってくれる?」
「…はい。」
あたしは歌った。
既存の曲に、自作の歌詞を添えて。
想いの丈を。