奏―かなで―
いく
それからはトントン拍子に話が進み、あたしはairの新しいボーカルとして、世間を少しばかり騒がせていた。
イケメン2人の間に女が入るということもあって、最初は若い世代の女の子達に非難された。
だけど、あたしは何も言わなかった。
代わりに歌で返した。
混じり気の無い想いを、あたしは歌に乗せた。
いつしか彼女達も口をつぐんでくれるようになった。
「詩花ちん。」
亮平くんが躊躇いがちにあたしを呼んだ。
「ん?…どうしたの?」
俯いたまま、目だけを窺うように上げ、あたしを見る。
「詩花ちんに知ってもらいたいことがあって…。」