奏―かなで―
ボロボロボロと、大粒の涙が出た。
歌っている間は、無我夢中で堪える暇も無かった。
だからちゃんと歌えていたと思う。
だけど終わった瞬間、糸が切れたみたいにボロボロと涙が溢れ落ちた。
ちゃんと伝わったかなぁ
ちゃんと伝えられたかなぁ
綾瀬の想いを、郁未さんに…
あたしの思いを、綾瀬に。
ゆっくりと綾瀬の方を見る。
綾瀬もまた、静かに涙を流していた。
あたしは向き直り、マイクに手を添えた。