奏―かなで―
ジャラァン‥
ギターが、曲の終わりを奏でた。
胸は、未だに苦しい。
拍手も、感嘆の声も出せないあたしに、彼はもう一曲弾いてくれた。
出だしは、やはり柔らかい。
「太陽が胸を焦がす朝10時
生命を感じる蝉の声
過ぎてく人波に
のまれそうになりながら
歩道橋から見下ろした
黒くなった世界に
透明の息を吹きかける
世界は色付いて
色とりどりの夏
分かっていたんだよ夜の9時
世界がどう見えるかなんて気持ち次第だろう
もう失わないよ
色付いた未来を望むよ
もう戻らない過去には
別れを告げて忘れない
黒くなった世界に
色とりどりの息
きっと何かが違うから
きっと素敵な未来を…」