奏―かなで―

「どんな漢字書くの?」

綾瀬は、左の手の平に右の指を浮かせてあたしを見た。

「ポエムの詩に、草花の花。」

そう言うと、綾瀬はあたしの言葉を追って、手の平に見えない名前を書いた。

「綺麗な名前じゃん!俺、すげぇ好き!」

ニコーッと笑って、綾瀬は言った。

「…ありがとう。」

心の中にあった棘が引っこ抜かれた気がした。

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