奏―かなで―
「…ねぇ、いつもここで歌ってるの?」
「んーん、気まぐれ。」
「気まぐれ…。」
残念、明日も聴きに来たかったのにな…。
「また見つけたら聴きに来てよ。」
「うん…。」
「俺はここに居るから…。」
そう言った綾瀬の声が、少し寂しげだったことに気付いたのは嘘じゃない。
だけど、綾瀬の哀愁漂う横顔が、あまりにも綺麗で。
いつのまにか染まった夕焼けと、伸びた影が一枚の絵画みたいだった。
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