甘いペットは男と化す
久しぶりと言われても、俺には相手が誰なのか分からなくて、ただ茫然と彼を見上げていた。
相手はあざ笑うかのように口角をあげると、
「本当に覚えてないんだな。実の父親まで」
と口にした。
ああ、この人が俺の父さんなのか……。
それを聞いても、イマイチピンとこない。
冷たい瞳をした、怖い印象をもった男。
確かになんとなく自分に似ているような気もするけど、なぜだか親近感がわいてこない。
何も答えないでいる俺に、父親は近くにあった椅子に腰をかけると、口を開いた。
「正直、俺とお前は親子の縁を切っている」
あまりにも淡々と話すその言葉に、さすがに衝撃を受けた。
俺は実の父親と縁を切っていた?
いったいなんで……。
「だけどお前がこうなったのなら話はべつだ。
もしお前が、これから俺の言うとおりに生きるというなら、親子の縁を戻してやろう」