甘いペットは男と化す
それからいろいろあって、
彼女が実は付き合っている彼氏に二股をさせられたり、
俺が泣いているところを見られたり……
彼女を放っておけないと思うのと同時に
彼女にたいして、愛しさが生まれた。
単純だって思われてもいい。
だけどあの時、俺を見捨てずに部屋に招き入れた結果が
彼女の優しさを気づかせてくれ、俺が惹かれるのに十分な理由だったということ。
彼氏に二股をされて可哀そう、と思っていただけの感情が
いつの間にか彼氏を憎らしく感じ、絶対にそいつのところへ戻って欲しくない。
ずっと俺の傍に……
俺だけの彼女でいてほしい。
そのためなら、今自分にできることは、なんだってするから……。
彼女の存在が、俺の記憶喪失という事実をどうでもよくさせた。
一緒に行った海。
温かい飲み物を買ってくると彼女は上へあがり、一人砂浜を歩いていた。
だけどやっぱり寒くて、風よけが出来る場所に身をひそめた。
彼女のイメージにピッタリな桜貝を拾って……。
俺を見つけて、ほっとした顔の彼女が本当にいじらしくて、
桜貝のイメージだと言われて照れた顔も本当に可愛いと思った。
照れ隠しのせいか、さっと俺から離れて立ち上がる彼女。
その途端降りかかる強風。
それは彼女の髪を大きく乱し
苦笑とともに俺へと振り返った。