甘いペットは男と化す
 
「もー、風すごすぎ。
 絶対に潮風でベタベタだよ」


(風強いねー!
 髪の毛結んでいい?)


「結んでくればよかった」


(ケイは髪の毛おろしているほうが好きだよね)



途端に思いうかんでいく、彼女とは別の彼女……。

二人の彼女が、勝手にかぶさって、頭を混乱させていく。


息が思うようにできなくなって
思い出せて嬉しいはずの記憶は、俺を苦しめるだけで……


「サ……キ……」


その彼女が、最初に思い出した「サキ」なんだとすぐに分かった。


「ケイ……?」
「ぅっ……」
「ケイっ!?」


その場で立っていられなくなった俺に、慌てて彼女は駆け寄ってきて、心配そうに俺の名前を呼んでいる。


いや、呼んでいるのは誰?

サキ?
アカリ?

頭の中が混乱して、わけが分からなくなった。
 
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