甘いペットは男と化す
「ケイ!しっかりして。
あたしが傍にいるから」
「……っ…」
その言葉に、ようやく頭をパンと叩かれた気がして、我に返った。
「ア…カリ……?」
「そうだよ。朱里だよ」
「そ、っか……。よかった」
俺を呼んでいたのが、アカリであったことにほっとしている自分がいた。
俺はサキを思い出したくない?
思い出しかけた記憶は、さっきアカリとかぶった、あの一瞬の出来事のみで、サキという彼女がいったい俺とどういう関係なのかとまでは思い出せなかった。
だけどなんとなく感づいている。
自分との関係に……。
今、目の前にいるのは、
何もない俺を、ただ受け入れてくれたアカリという女の子で……
「ごめん……。
しばらくこうしてていい……?」
「うん……」
今はただ、アカリを手離したくないという気持ちのほうが大きかった。