甘いペットは男と化す
 
ノートを4冊目に行く頃には、見覚えのある筆跡はどこにも見当たらなくなっていた。

それはもう、俺と沙樹が別れたという証。
二人でこの店に訪れることはないという……。



ああ、そうだ……。

俺はあの時、全てを捨てたんだ。


信じることも
愛することも


全部全部、何もかも……。


今さら俺が、誰かを好きになるなんて無理。

愛したところで、同じ結果が待っているだけだから。




「……忘れてたほうが…幸せだったかもな……」




それはもう、嘆いたとしても遅い。


「ありがとうございましたー」


ウェイターに見送られる中、俺は一人外へと歩き出した。



舞い散る雪を体に感じながら……。
 
< 119 / 347 >

この作品をシェア

pagetop