甘いペットは男と化す
ノートを4冊目に行く頃には、見覚えのある筆跡はどこにも見当たらなくなっていた。
それはもう、俺と沙樹が別れたという証。
二人でこの店に訪れることはないという……。
ああ、そうだ……。
俺はあの時、全てを捨てたんだ。
信じることも
愛することも
全部全部、何もかも……。
今さら俺が、誰かを好きになるなんて無理。
愛したところで、同じ結果が待っているだけだから。
「……忘れてたほうが…幸せだったかもな……」
それはもう、嘆いたとしても遅い。
「ありがとうございましたー」
ウェイターに見送られる中、俺は一人外へと歩き出した。
舞い散る雪を体に感じながら……。