甘いペットは男と化す
 
その言葉に、ケイはただ首をかしげる。


「思い出す?何も」


とぼけているのか、本当なのか……
それすらも判断できないほど、今日の彼は大人で……。


「ごめんね。最近アカリのことが好きすぎて、我慢できなくなってるのかも」


そんなことを言って、触れていた頬から手を離した。


「おやすみ」


いつもなら、必ず顔のどこかしらにキスを落とすのに
今日は言葉だけの「おやすみ」でソファーへと向かって行く。


なぜだろう……。
ソファーとベッドの距離は、2メートルにも満たないのに、すごく遠く感じてしまう。


このままケイが、どこか遠くに行ってしまいそうな気がして……




「……アカリ…?」

「いい、よ……。ケイなら……」




あたしは、ケイの背中に抱き着いた。
 
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