甘いペットは男と化す
「ケイっ!!」
慌てて布団から出て、部屋を見渡しても、ケイの気配はどこにも感じられなくて……
ドクンドクンと嫌な胸騒ぎだけが掻き立てる。
まだ太陽が昇ったばかりの薄暗い外へ
コートを羽織って飛び出た。
右を見ても左を見ても
誰も歩いていない住宅街。
ただ、コンビニへ行っただけなのかもしれない。
何かを思い出しかけて、ちょっと出かけただけなのかもしれない。
そんな予想もあったけど
昨日のケイの様子を思い出して、何かが違うと感じ取れた。
手がかりなんかどこにもなくて
ただがむしゃらに探した。
生まれて初めて、仮病を使って会社を休み
バカみたいに一緒に行った海まで向かった。
真っ青な海が広がる砂浜には、誰の姿も見当たらなくて、
ここまで追いかけてきた自分がバカみたいに思える。
数時間砂浜で待ち続けたけど、結局ケイが現れることはなかった。
冷え切った体を持ち上げて、一人虚しく帰路に着く。
そして……
「あ……」
家に向かう前になんとなく足が立ち寄った。
目の前には、ケイと来たクローバーのカフェがあった。