甘いペットは男と化す
 
「いらっしゃいませー」


平日ということもあって、この前ケイと来たときよりはだいぶ空いていた。

この前とは違うウェイトレスさんが出迎えてくれて、あたしを中に促す。


「あの……」
「はい?」
「ここに、20歳過ぎくらいの、綺麗な男の子が来ませんでした?」
「え?」


席に案内されながら、目の前のウェイトレスさんに尋ねた。
だけど彼女は首をかしげるだけ。


「といいましても……」
「えっと……あたしより少しだけ背の高い、薄茶色の瞳をした男の子です!」
「うーん……」


前のめり気味になって聞くあたしに、ウェイトレスさんは困惑していくだけ。


やっぱそうだよね。
そんないちいち覚えているわけ……。



「多分、その子なら、昨日来たと思いますよ?」

「え?」



だけど彼女の後ろから、男のウェイターさんが声をかけてきた。


「昨日の午前中、一人で来て……
 あの奥の、カップル席に座らせてほしいとお願いされたので、印象的でした」

「奥の……カップル席……?」


それを言われて視線をそっちへともっていくと、そこは以前、ケイがじっと見つめていた席があった。
 
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