甘いペットは男と化す
 
【○○年3月25日
 初めてこのお店に来たヨ!
 クローバーが可愛いし、ケーキもおいしいし気に入っちゃった♪
 これからいっぱい通いたいと思う!

     景&沙樹】



その文字を見た瞬間、胸がズキンと痛みだす。

誰にだって過去はある。
自分にだって元彼はいる。


それでも痛む胸に、湧き上がる醜い嫉妬。


先へ読み進めると、またさっきと同じ筆跡が目に入って、同じようなコメントが書かれている。


幸せを感じている二人。
たまに登場してくる、ケイの筆跡。

二人のやりとりは、文字から伝わるほど幸せそうで……。



「…………そ…っか…」



あたしは、最後まで目を通せずにノートを閉じた。



分かってしまった。
ケイが今いなくなってしまった意味を……。


きっとケイは、昨日一人でこの場所に来て
ノートの存在に気づき、自分の頭の中に沙樹さんを入れていったんだ。


そして記憶が戻り……




彼女を選んだ。

 
< 133 / 347 >

この作品をシェア

pagetop