甘いペットは男と化す
11章 別人の彼
「ありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ」
深く頭を下げて、来客が帰るのを見送る。
毎日が白黒の世界のような、同じ日々だった。
ケイがあたしの前から姿を消してから、もう3か月が経つ。
本当に一切音沙汰のない彼は、今頃どこで何をしているのかは分からない。
「北島さん、お疲れー!」
「あ、お疲れ様です」
訪問から帰ってきたであろう矢代先輩が、いつものように挨拶をしてきた。
「毎日訪問も大変ですね」
「まねー。今は春だからいいけど、真夏は最悪よ。スーツだし」
「ですよね」
季節も気づけば春。
ケイに出逢ったときのような、真っ白な雪が降ることももうなかった。
「北島さんさ」
「はい?」
「今日の夜……」
「やほー!朱里!!」
矢代さんが何かを言いかけたとき、後ろから元気な声が言葉をさえぎった。