甘いペットは男と化す
「菅野ちゃん、お先ありがとう。
ランチ行ってきていいよ」
「はーい。了解です」
お昼、菅野ちゃんより先にランチを済ませ、戻ってきてからバトンタッチ。
受付を二人で回しているうちらは、必ず交代でランチに行かないといけない。
なので、だいたい先輩であるあたしのほうが、先にランチを済ませてしまうのだ。
「じゃあ、ちょっと行ってきますね」
「行ってらっしゃい」
軽く手を振って、長財布を持った菅野ちゃんを見送った。
さて、このあとのアポは……。
軽く、午後の来客時間をチェック。
2時に2件、3時に1件……
ざっとパソコンのディスプレイに目を通していると、廊下から人が通る気配を感じ、席を立った。
一番前には矢代さん。
その後ろには、馴染みとなっているビレッジレインの神崎さん。と、後ろにもう一人いるのかな……?
とりあえず来客の方が帰るようなので挨拶をしなければと、スマイルを作った。
だけどその瞬間……
「っ……!!」
呼吸を忘れるほど、自分の時が止まった。