甘いペットは男と化す
「北島さん?もう行ったよ?」
「あ……」
いつまでも頭を上げないあたしに、矢代さんが不思議そうに声をかけてきた。
顔を上げると、エレベーターはすでに一階へと降りていて、自分が長い間頭を下げていたんだと気づく。
「どうかした?」
「……あの……。今、来ていた方って……」
「ん?いつものビレッジレインだけど」
「神崎さんですよね。あと……後ろにいた方は……?」
もしかしたら、他人のそら似かもしれない。
似ていたけど、雰囲気も全然違ってたし。
「村雨景くんだったっけかな。彼はあの会社の……」
「け、い……」
名前を聞いて、確信へと変わってしまう。
他人のそら似なんかじゃない。
彼は間違いなく……
「あ、北島さん!!」
あたしの知っているケイだ。