甘いペットは男と化す
 
「ん?ああ、分かった」


神崎さんも、あたしの何かを悟ったのか、とくに理由を聞いてくることもなく一人駅へと歩いて行った。


「えっと……俺に何か用ですか?」


二人きりにしてくれたことから、少しだけ期待をしていたけど、
ケイから向けられる視線と言葉は、変わらず他人行儀。


すでに泣き出したくなったけど、それを堪えて口を開いた。


「あたしのこと……覚えてない、の……?」


その言葉を聞くと、ケイは困ったような顔をしてあたしを見つめる。


「ごめん……」


たった一言、返ってきた言葉。

どんな「ごめん」よりも、重たく、胸に突き刺さった気がした。


「そ、う……」


ズキズキと胸が痛くなって
整ったはずの息が再び乱れていく。


苦しい……
辛い……。

どうして神様は、こんな仕打ちを仕向けたのだろう……。



「なら……いいの」



どうすることも出来なくて
あたしはケイの瞳を見ることも出来ず、背を向けた。
 
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