甘いペットは男と化す
その笑みが、あまりにも彼に不釣り合いだったので、思わず言葉を失った。
だけど彼は口角をあげたまま、あたしの頬に手を重ねると、
「俺、もともといい加減なとこあるからさ。
手を出してたとしたら、きっとそれ、俺の本質」
「……」
悪魔の微笑みともとれるような、背筋が凍る微笑み。
こんなふうに笑うケイなんて……あたしは知らない。
「もしかして俺、あなたに愛の告白なんかしちゃったりした?」
何もかも、お見通しのようなその瞳は
逸らしたいのに捕らわれたかのように逸らすことも許されなくて……
「ごめんね。
そうだとしたら、本気じゃないから」
「……」
涙をこぼすのさえ、ためらわれるくらい
夢の出来事なんかじゃないかと思った。
頬を捕えていた手のひらは、春先だと言うのにひんやりと冷たくて
すすっと親指が伸び、あたしの唇をなぞった。
「でもお姉さん、
俺のタイプだから、相手にしてほしかったらいつでもするよ?」
「……ッ!?」
そこまで言われて、ようやくパンとケイの手を跳ね除けた。