甘いペットは男と化す
この会社に勤めてから、わりとすぐに淳史と付き合い始めて……
彼氏がいることを隠していなかったあたしは、こうやって誰かにアタックをされることなんかなかった。
だから今、矢代さんに飲みに誘われたことに、正直戸惑っている。
それに……
(でもお姉さん、
俺のタイプだから、相手にしてほしかったらいつでもするよ?)
今は、あの時見せたケイの顔と声が頭から離れられない。
ううん。
離れられないんじゃない。
離さないといけないんだ。
もうケイが、
「アカリ!」
とじゃれつくような笑顔であたしを呼ぶことはないんだから……。
ある意味、もともとのケイの性格が、あんな最低な男でよかった。
これでもう、ケイへの未練はなくなる。
だから……
「行こっか」
「はい」
せっかくこんなあたしを、飲みに誘ってくれた矢代さんに
積極的に受け答えしたっていいんだ。