甘いペットは男と化す
「……アカリ」
「何」
「駅……そっちじゃないんじゃない?」
「……」
あたしの後ろには、少し忘れかけていたケイがついてきていて……
自分が駅とは正反対に向かって歩いていることに気が付いた。
「いい。歩いて帰るから」
「でも歩いたら、3時間くらいかかるでしょ。
道も分かるの?」
「いいの。早く帰ったってやることないんだし」
時間はまだまだお昼前で、
こんな中、家に帰ったって余計に淳史のことを考えてしまう。
今はまだ状況を飲み込みきれていなくて、何も考えたくない。
ただがむしゃらに歩いているほうがマシだ。
「ダメだよ。
足がボロボロになっちゃう」
「え?あ、ちょっと」
「乗って」
いつの間にタクシーなんか捕まえていたんだろうか。
グイと引かれた先にはタクシーが停まっていて、半ば強引に乗せられた。