甘いペットは男と化す
「アカリ」
「ちょっ……」
急に包み込まれた温もり。
あたしよりも、少しだけ背の高いケイの体は、見た目よりも華奢ではなくて、男の匂いを感じさせた。
「アカリの作り笑い、見てて痛い」
「わ、るかったわねぇっ……」
「だから泣いて」
耳元で聞こえるその声は、低くかすれた声で……。
真面目な声色に、少なからずドキッとした。
「一度泣けば、スッキリするはずだから」
「……無理だよ。そんなこと言われたって……」
今、泣くのはきっと無理だと思う。
淳史に振られたばかりで、辛いはずなのに
この状況にドキドキしてたまらないから……。
こんな年下の男の子なんかに……。
「じゃあ、どうすれば泣ける?」
「え……」
少しだけ体を離して、じっと顔を見つめた。
薄茶色の瞳が、まるでビー玉にさえ思える。
本当に、雑誌から飛び出てきた容姿だ。