甘いペットは男と化す
 
翻された体。

踏み出された足。


自動ドアは閉まる寸前で、向きを変えて動き出す。


どんなに違って見えても
どんなに最低な言葉を吐かれても


目の前のこの人が
あの時のケイであることには変わらないから……。




「……ダメ、じゃん……。
 ルール違反だよ」


「アカリが悪い。本当に俺を捨てようとするから」




抱き合う体は、自動ドアのど真ん中。



あたしだけが引き返したんじゃない。

ドアが閉まる寸前に動いたのは、ケイも同じ。


お互いに踏み出された体は
自動ドアの真ん中で抱き合っていた。

 
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