甘いペットは男と化す
「無理。泣けない!
だって泣きたくなるほど悲しいわけじゃないし」
ドキドキと高鳴っていく自分に嫌気がさして、パッと顔をそむけた。
体を離したくても、ガシッと掴まれているせいで逃れられない。
ケイはあたしの答えに少しだけ困惑した瞳を浮かべると、
「じゃあ……
アカリが泣けるまで、傍にいる」
ひらめいたかのようにニコリと笑った。
「え……」
「それに、彼と別れたんだったら、俺がここに居座っちゃいけない理由はないでしょ?
アカリの傍にいて、アカリが寂しくないようにする」
「ちょ、ちょっと待って!」
確かに、彼氏が嫌な気になるという理由で、ずっとケイがここに居座ろうとしていることを拒み続けていた。
その彼氏と別れたとなると、ほかに理由がなくなってしまうわけでもあるけど……
「やっぱ無理だって!」
「なんで?」
「だってその……
一応、あたしとケイ、男と女でしょ?
付き合ってもないのに一緒に住むなんて……」
きょとんとした顔立ちから、だんだんと曇っていく表情。
信頼していたご主人様に、捨てられた子犬のようだ。