甘いペットは男と化す
 
「矢代さん」


静かに名前を呼ばれた矢代さんも、悟ったように言葉をつぐんだ。

ゆっくりと向けられる視線。
逸らしたくもなったけど、今は逃げてはいけないと、彼の瞳を捕えた。


「あの……今日はお返事を…しに来たんです」
「……」


ずっと先延ばしにしていた告白。

初めて二人きりで飲みに行ったときに告白され、返事はまだいいと言われていたことからずっとそれに甘えていた。


彼をいつか好きになれる日が来ると……
自分も前向きに彼のことを考えようと……


ずっとそう思っていたから、断りの返事もしてこなかった。


けど……



(努力しようとしている時点で、それは好きにはならないってことだよ)



ケイに言われた言葉。

それは言い返せないほど、尤もな台詞で……




「……ごめんなさい。
 あたしは……矢代さんとは付き合えません」




これが、あたしの出した結論だった。
 
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