甘いペットは男と化す
「んと……北口を出て右側に……」
ビレッジレイン社がある駅に着いて、辺りを見渡した。
うちの会社とビレッジレインは、長い間取引関係にあったけど、あたしが出向くのは初めて。
携帯で調べた地図を頼りに、駅から降りて会社を探した。
「あれか」
いくつかのビルが立ち並ぶ一つに、大きく名前が記されている「ビレッジレイン」。
自社ビルがあるって、やっぱ違うな……。
うちの会社は、一つのビルを3フロア賃貸として借りているだけ。
だけどビレッジレインとなれば、ビルそのものが、この会社なのだ。
矢代さんはどこにいるんだろう?
やっぱエントランスかな?
見たところ、入り口の前には矢代さんの姿はない。
次に可能性があるとしたら、入ったエントランスのところの可能性が高いので、綺麗に磨かれた自動ドアを通り抜けた。
「……いない…」
だけどそこにもいなくて、鞄から携帯電話を取り出すと彼にかけた。
なのにその携帯にすら出ないということは……
もしかしてもう打ち合わせが始まってしまったのだろうか。
そう思っていると、自動ドアが開いた音に気付いた。
「………あ…」
そしてその先にいた人物を見て、小さく声をあげてしまう。
そこに入ってきたのは、ケイだった。