甘いペットは男と化す
 
なんとなく、咄嗟に身を隠してしまった自分。

ケイから隠れたんじゃない。
なぜだかよく分からないけど、ケイの隣にいる、年配の男の人から身をひそめたくなってしまったのだ。


植木の影から見えるのは
ケイと、年配の男の人二人。

見た感じ、一人はすごく偉い人の雰囲気。

もう一人の年配の人は、二人に軽く頭を下げると先にエレベーターへと乗り込んでいく。
だけどケイとその年配の人は、あろうことかあたしのすぐ近くで立ち止まって話をしていた。


「さっきも話したが、あの会社はのちにうちと吸収合併をさせるつもりだ。
 だから弱気にならずに、強気な提案をしていけ」

「わかったよ。たとえこっちに非があっても、頭を下げる必要なんかないってことだろ」

「言い方が悪いな」


どう見ても、立場も年齢も相手のほうが上なのに、ケイは敬語を使うことなく投げやりな感じ。

よく見たら、二人の雰囲気は違うものの、目元が似ていることに気が付いて……



「じゃあ、俺も仕事戻るから。打ち合わせ入ってるし」

「景」



一社員を、名前で呼ぶ年配の人。


きっと彼は……
ケイの父親だ。


つまりこのビレッジレインの社長となる。
 
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