甘いペットは男と化す
 
確かに、あたしにお見合いを止める権利なんかない。

彼女でもなければ、今のケイから愛されてもいない。


自分で、体だけの関係と承知して
まるでペットとご主人様のような関係を築いたんだ。


「そんな顔しないでくれる?」

「…っ」


自分でも無意識に湧き上がってくる涙。

こんなところで泣くなんて、みっともなさすぎる。


すぐに顔を伏せて、ケイから顔をそむけた。


女の涙なんて、卑怯な道具でしかなくて、
なんとも思っていない相手の涙なら、ただのうざい対象でしかない。

嫌われる原因の一つだ。



「抱きしめられないでしょ。
 ここで泣かれても」


「………え…?」



だけど聞こえてきた言葉に、思わず再び顔を上げた。

そこには、感情が読み取れないような複雑そうに微笑むケイがいて……




「これ以上、俺のことは好きにならないほうがいいよ」




なんとも残酷な、言葉を吐いた。
 
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