甘いペットは男と化す
 
覆いかぶさるように抱き着いているケイ。

ゴロゴロと人の顔に自分の顔をこすりつけて、それはまるで拾われた子犬のよう……。


「アカリ、大好き」

「ちょっ……」


ちゅっと頬に口をつけて、当たり前のように頬にキスをした。


無邪気すぎるその行動……。
本来なら怒るべきはずの行為なのに、怒りすら忘れるほどで……。



記憶喪失とは、いったいどこまで忘れているものなのだろうか……。

なんの知識もないあたしは、これからのケイの行動に、どこをどう怒っていいのか分からないものであり……。



「アカリ」

「な、何……?」



急に真顔になって、人を見下ろしてくるケイ。

不覚にもドキッとしながらも平静を保って見上げた。



「寂しくなったら、いつでもお相手するからね」



にやりと微笑んだ、小悪魔な微笑み。



ああ、もしかしたら……

とんでもない子犬を拾ってしまったのかもしれない。

 
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