甘いペットは男と化す
 
思わず振り返ったけど、相変わらずあたしには背中しか見えないから、どんな瞳をしているかなんか分からない。

だけどきっと今、彼の瞳は悲しく遠い目をしている……。
そんな気がした。


「あ、父から電話です。失礼します」


ケイの携帯に、お父さんから電話がかかってきたようで、ケイが立ちあがった。

電話ということもあって、一度三人の前から離れる。

あたしは自然と立ち上がり、ケイのあとを追った。






「え?ああ、もう会ってる。………分かった。先に入ってるから」


電話の相手は、宣言通りお父さん。
さっきの物腰が柔らかい声とは一変して、低く冷たい声になっている。


電話を終えたケイが、ふっと振り返った。
予想以上に速いその行動に、あたしは身をひそめることを忘れ、バチッとケイと目が合ってしまった。


「……アカリ…?」

「あ……」


やばいっ……。

自ら追ってここまで来たはずなのに、いざ見つかるととても悪いことをした気持ち。


あたしは慌てて、ケイの前から走り去った。
 
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