甘いペットは男と化す

　
「何それ。今日の見合いは、俺の意思で来たものだって知ってんだろ？」

「俺、の意思じゃないでしょ。
　そう思い込むしかなかったからでしょ？」

「は？」


記憶が戻ってからのケイは、いつも強気で、皮肉交じりで、人を見下しているような男だった。

あたしは惚れていた弱みのせいで、そんなケイに逆らえず、いつも流されてしまっていたけど……


「こんなことしたって、自分を苦しめてるだけじゃん」


いつもケイは、苦しんでいたことにようやく気づいた。


「何言ってんの？」

「好きでもない人と、諦めの結婚して、何になるの？」


もがき、あがいていたのは、
まだ大人になり切れていないケイ。

自分の立場から抜け出せず、大きなプレッシャーを抱えている。


それが、社長の息子だからかは分からないけど……。


「……結婚してから、好きになることだってあるでしょ」

「ないよ」


あたしを諦めさせるために、あえて選んだ言葉だってことも分かる。

愛さないと言いながら、そんな言い訳は通用しない。


それに……




「ケイが好きなのは、あたしでしょ？」





今、ケイの心を捉えているのは
きっとあたしのはずだ。