甘いペットは男と化す
「景…さん……?」
「こういうことだから。
だから見合いの話もなかったことにして」
「…っ……」
さっきの物腰が柔らかい口調とは想像つかないほど、冷たい声色。
彼女はビクッと肩を震わせ、あたしたちの前から走り去っていった。
「ケイ……?」
「行くよ。ここにいたら、親父が来る」
「あっ……」
ケイはあたしの手を掴むと、正門ではない西口からホテルを出た。
タクシー乗り場から乗り込み、あたしのマンションを告げる。
「あの……」
「アンタのせいだよ」
「え……」
「責任とって」
前を見たまま、言い放たれる言葉。
責任といっても、何をどうとればいいのか分からない。
あたしは、留美さんのような令嬢でもないから、お金も立場もない。
けど……
「……傍に、いるから」
「……」
手を反転させ、掴んでいたケイの手をぎゅっと握り返した。