甘いペットは男と化す
ケイがいったい、何に悩み、何を思って、自分を犠牲にしていたのか分からない。
もしかしたら、昔の彼女の「沙樹さん」が何か関係しているのかもしれない。
「俺以外、何もかも失っても知らないよ」
「……いいよ。ケイがいるなら」
その言葉の意味が、まだよく分かっていなくて……
「べつに社長の息子じゃなくたって、いいんだよ。
あたしのペットでも」
「……それもいいね」
ふざけたあたしの言葉に、ケイは一瞬の間を置いて、くすりと笑った。
「じゃあ、ご主人様。
俺をいっぱい可愛がってください」
「もう……。甘えたな子犬だなぁ」
じゃれつくベッドの中、これから起きる未来を想像していなくて
無邪気な子犬が、小悪魔な子犬へと変わったな……
とくらいしか考えていなかった。
「北島。ちょっと来い」
月曜日、上司に呼び出されるまでは---。