甘いペットは男と化す
 
「え……」


いきなりの言葉に、その場で固まってしまった。

ケイとのことは、あたしたち本人と、矢代さんくらいしか知らないはず。
だから、まさか自分の社長から、そんなことを言われるとは思ってもいなくて、どう応えようか迷ってしまった。


あたしの態度に、社長も何かあると悟ったようで、わざとらしく大きくため息をついた。


「実はビレッジレインの社長さんから、直々に話がきてね……。
 どうやら、わが社の一社員が、自分の息子をたぶらかしていると……」

「そんなっ……」


たぶらかすなんて、人聞きが悪い。

確かにあたしとケイは、男女の関係があるけど、それは遊び心とかではない。


「うちとビレッジさんは長い付き合いだ。取引相手としても、申し分のないほどのごひいきをいただいている。
 だけど今回のことで、向こうの社長さんはお怒りでね……」

「……」


「もしこの先も、息子にかかわるようであったら、うちとの契約も今後は見合わせると言ってきたんだよ」


「…っ」


自分のしている事の大きさに、鈍器で頭を殴られた気分になった。
 
< 224 / 347 >

この作品をシェア

pagetop