甘いペットは男と化す
 
「まあ、すぐにどうこうしようというわけではないと言ってくれている。
 私としても、プライベートのことに口をはさむのはセクハラ発言と言われても困るしな。

 だが……

 しばらく北島くんは、自宅業務へと切り替えてくれ」


「……わかり…ました……」


悔しくて、その場で唇を噛んだ。

だけど自分が、ここで何かを言っても無駄だと言うことは分かっていた。






「……はぁっ…」


社長室を出て、トイレへと駆けこんだ。


あたしが自宅業務という辞令を出されたのは、休んでいる間にきっちりとケイとけじめをつけてこいという意味。
それが出来たら、仕事に復帰していいと言うことなんだ。

もしそれが出来ないのなら、あたしに託された道は退職ということで……。


「……」


うちの社長は、決して悪い人や卑怯な人ではない。

だけど、自分の担う会社を考えたら、ただの一社員よりも、大きな取引先の会社を選ぶのは当たり前のことで……。



「なんでっ……」



あたしはただ、まだ話したことのないケイの父親に、憤りを感じていた。
 
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