甘いペットは男と化す
 





ガチャ……


夜、一人ベッドの上でぼーっとしていると、誰かが玄関を開ける音が聞こえた。

ハッとして、体勢を整えていると、


「……何、辛気臭い顔してんの?」

「ケイっ……」


スーツではない、私服姿のケイが部屋に入ってきた。


「え、どうして?今日は家に帰るって言ってなかったっけ?」
「うん、帰ったよ。だけどちょっと気になったことがあったから」


ドサッとさまざまな荷物をおろして、あたしの座るベッドへと近寄ってきた。

持っていたのは、出勤用の鞄や、スーツを包んだ袋。
それは今日、泊まっていくということ。


「今日、何かあった?」
「え……?」


大きな丸い瞳が、じっとあたしを見つめた。

相変わらず女の子のような綺麗な顔をしているのに、その瞳は人を身動きさせないほどの力を持っていて……



「……何も、ないよ?」



あたしは必死に、動揺を隠して一言返した。
 
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