甘いペットは男と化す
 
騙されたのか、諦めたのか……
どっちか分からなかったけど、ケイは「そう」と一言漏らしてあたしの横に腰掛けた。

いきなりそんなことを聞いてきた意図が分からなくて、横目でケイの顔を見つめる。


「どうして?」

「何もなかったから」

「え?」


どうも、今のケイの話し方は、すぐには理解しがたい。

首をかしげて問いただすと、ケイもちらっとあたしを見た。


「親父がいつも通りだった。見合いをすっぽかしてきたって言うのに……。
 次は変な気起こすなよ、って一言言っただけで、それ以上の追及もしてこなかった」

「……そう…」


それを聞いて、自分の身に降りかかっていることを話すべきか悩んだ。


ケイの父親は、ケイにではなく、あたしに不利な状況を吹っかけてきた。

お父さんは、決してお見合いにたいしてなんとも思ってないわけではない。
だからケイが、お見合いをすっぽかした原因の相手を調べ、その相手のあたしに警告を出したんだ。

これ以上、息子に関わったら、自分の職を失うと……。


でも……



「本当に何もされてない?」



不安そうにじっと見つめるケイを見ると
とてもじゃないけど、そのことを言える気にはならなくて……



「大丈夫だよ。
 今日も忙しない一日だったくらい」



なるべく安心させるように、にこりと微笑んでそう答えた。
 
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