甘いペットは男と化す
 
忙しいかどうかも分からなかった一日。

結局、朝会が終わって社長に呼び出されてから、あたしはすぐに家に帰らされた。


菅野ちゃん、いきなり受付一人になっちゃったけど大丈夫かな……。
そんな心配をかかえて……。


「ねえ」
「何?」


「どうしてケイは、突然会社を継ごうと思ったの?」



ふと疑問に思ったこと。

そう言えば以前、ケイは父親と縁を切っていると言っていた。
記憶を失っても、自分と父親はそりが合わないと感じ、復縁も跳ね除けていたくらい。

それなのに、今回再会したときには、ケイはすでに父親の会社の社員として働いていたのだ。


ケイはその質問にため息を漏らすと、



「諦めたから。全部」



自分をあざ笑うかのように、言葉を吐きだした。
 
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