甘いペットは男と化す
「聞いて、悲しくならないでね」
「え?」
「前の彼女の話も入るから」
「……うん」
ケイは一言あたしに断ると、自分が父親と絶縁したことから話し始めた。
「俺が親父と縁を切ったのはさ……
前の彼女……サキとの仲を認めてもらえなかったからなんだ」
それは、確かにあたしが聞くには、少し胸の痛い話だった。
「サキはもともと俺が高校生の時の家庭教師。
だけど勝手に俺が好きになって、ずっとアタックしてて………大学が受かったと同時に、サキもようやく俺の気持ちに応えてくれた」
(サキ!約束通り、大学受かったぜ!
これでお前が気にしてること、なくなっただろ?)
(景……。うん、わかったよ。
景と付き合う)
(よっしゃ!!)
「ほとんど強引に始まった仲だったけど、それなりに楽しくやってて……
気づけば、俺とサキは半同棲生活を送ってた。
だから当然、親父が俺とサキの関係に気づいたんだ」
(お前、誰かと付き合ってるのか?)
(……ん)
(遊びだったらいいが、本気の付き合いはやめておけ。
お前にはもっとふさわしい相手を俺が用意してやるから)
(はあ!?)
「親父は最初から、俺に結婚相手を選ばせるつもりなんかなくて、自分の会社に見合った家と結婚させるつもりだったんだよ」
ケイは瞳は、冷たく遠くを見つめていた。