甘いペットは男と化す
23歳という年は、確かにもう大人かもしれない。
子どものように、何もかも好きなことをしていい年ではないかもしれない。
それでもまだ、
社会をたいして経験していないこの青年が、
自分のしたいことすべてを押し込んで、生まれ育った環境に収まるのは納得が出来なかった。
会社を継ぐのが彼の宿命でも
誰かを好きになることまでやめる必要なんてどこにもないはずだから……。
「自分の幸せは、自分で決めなよ」
「……」
ケイがあたしを突き放そうとしながらも
いつも近くに来て、何かを仕掛けてきたのは、
きっとそこに、諦めてはいけない心が潜んでいるから。
あたしはそれを、引っ張り上げてあげないといけない。
「ケイ、答えて。
今のケイは……あたしのこと…好き?」
手をぎゅっと握りながら、ケイの顔を見上げた。
ケイの瞳は一瞬揺らいで、あたしから目を伏せる。