甘いペットは男と化す
 
「アカリ……」

「ケイが心配しているのは、今度はあたしに、沙樹さんにされていたことが降りかかるということでしょ?」

「……」


あたしの言葉に、ケイは図星をさされて何も言えなくなっている。

そんなケイに微笑むと、


「負けないよ。あたしは」


元気よくガッツポーズを見せた。


すでに降りかかり始めている、仕事への危機。

ケイを選ぶ結果を出してしまった以上、あたしはもう、あの会社にはいられないだろう。


正直、会社を辞めるのは辛い。
経済的に、という意味ではなく、
新卒からずっと勤め続けたあの会社には、当然愛着だってある。


それでも今、
あたしは自分の身以上に大切な人が出来てしまったから……




「ねえ、ケイ……


 一緒に立ち向かっていこうよ」


「アカリ………。うん」




家柄も
容姿も
何もかもが普通のあたし。


だけど彼がいれば、きっと誰よりも強くなれる。
 
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