甘いペットは男と化す
 
「………やっぱり…」


あたしの様子を見て、すぐに悟ったケイは、大きくため息をついた。

ソファーに座り込んでいるあたしの目の前にまで来て、目線を合わせるようにしゃがみこむ。


「なんで言わなかったの?昨日には分かってたんでしょ?」
「……それは…」


確かに、ケイが昨日家に来た時には、あたしはもう辞令をくらってた。

けど、言えるわけない。
ケイのお父さんが原因ということは、ケイとの関係が原因ということなんだから……。

それはケイ自身を責めることになってしまう。


「やっぱり警告されたんでしょ?俺と別れろとか、近づくなとか……。
 じゃないと、うちの会社との契約を取りやめにするとか言って、アカリの会社の社長まで取り入って」

「……」

「……黙ってたらわかんないよ」


まるで、親に諭されているようだった。

ケイの声は、あたしが予想していたような怒鳴り声とかでもなく、ただ優しくて……。
あたしは何も言えない子供……。



「アカリ……」



ケイはそっと、あたしの手を握った。
 
< 245 / 347 >

この作品をシェア

pagetop