甘いペットは男と化す
 
「アカリはいいの?本当に今の会社を辞めても」


優しい声は、あたしを素直にさせるのに十分で……


「……嫌…。本当はやめたくない……」


押し込んでいた本心が、露わになっていく。


今の仕事に、絶対的なものを持っているわけではない。
結婚して、子どもができたら、その時は辞めるくらいの思いもある。

けど……

それまではできることなら、あの会社で頑張りたい。


「ん。分かった」


あたしの本心を聞けたケイは、満足そうに微笑み、握っていた手のひらに優しいキスを落とした。


「………なんか…昔のケイみたいだね…」
「え?」
「優しいし、甘すぎる……」


大人だし、余裕があるし、
そんな甘い振る舞いをしてくるなんて、記憶を失っていたケイみたいで……。


「まー……
 あの時の記憶、残ってるからね。
 アカリに甘々になるのはしょうがないんじゃない?」


少し照れながら答えるケイは、やっぱり可愛いなんて思った。
 
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