甘いペットは男と化す
「1週間ぶりかぁ……」
月曜日の朝、いつもと変わらない時間にオフィスの前に立っていた。
結局、金曜日に、上司から電話がかかってきて
「ひとまず、来週からまた出社するように」
と言われた。
「ひとまず」というところが怪しい。
きっとあたしが、どうするか答えを聞いてから決定をするんだろう。
引き継ぎとかいろいろあるだろうし、
いきなり「はい、明日から来ないで」なんて言えないよね。
もし、また社長に呼ばれて、ケイとのことをどうするかと聞かれたら、
迷いなくあたしはケイを選ぶ。
ケイには確かに、この会社を辞めたくないと言ったけど、ケイを諦めてまで続けていたい会社ではない。
今の自分にとって、何より大切な存在は、ケイだから……。
「………おはようございます…」
「あ、朱里せんぱーい!!」
エレベーターを降りて、オフィスのフロントへ顔を出すと、泣きそうな顔をして立ち上がった菅野ちゃんがいた。
「よかったぁ……!もう来ないかと思っちゃったじゃないですかぁ」
「菅野ちゃん……ごめんね、いきなり……」
「何があったとか、すんごーく気になるんですけど……。
とりあえず今は、そんなこと言ってられないので。
仕事、鬼のように溜まってますよ」
「はい……頑張ります……」
菅野ちゃんは、確かにきゃぴきゃぴしてるし、飲み会や合コンが大好きないまどき女子だけど、仕事にたいしては真面目だ。
自分の好奇心を押さえて、まずはあたしに仕事を押し付けてきた。