甘いペットは男と化す
19章 別れの理由
「ここでいい?」
「あ、はい」
英会話教室から少し離れた、少しこ洒落たイタリアンのお店。
地下にあって、本格的というわけではなさそうだけど、種類も豊富で女子率が高い場所。
奥の席に通され、お互いに注文をした。
「誘われたってことは……私と景のこと、知ってるってことでいいのかしら?」
「………はい…」
注文を聞き終えた店員さんが去るのと同時に、さっそく本題へと切り出す相内先生。
その質問に、深く頷いた。
「でも、もう終わったことよ?半年も前のことだし……。
その時は、私もあなたみたいに髪も長かったかな……」
「え?そうなんですか?」
それを言われて、少し驚いてしまった。
今の相内先生は、肩より上のショートに近いくらいの短い髪。
綺麗な暗めのブラウンが、より大人の女を演出させている。
「うん。もう伸ばしている必要もなくなったから……」
そう言った相内先生の微笑みは、なんだか少しだけ悲しげだった。
「だからお互いに未練もないはずだけど。
それでも何か聞きたいことがあるの?」
未練がないと聞いて、少なからず安心した自分がいる。
それを顔には出さずに、相内先生の顔を見上げた。