甘いペットは男と化す
 
「そん…な……」


相内先生の言葉を聞いて、あたしがショックを受けていた。

決して、ケイと先生によりを戻してほしいわけではない。
だけどそんな形で、ケイが裏切られていたことにショックだった。


「だから景は、今は私を恨んでるはずだわ。
 もう未練とか、ないはずだから……」

「……」


笑いを添えて、それを過去のものとして片づけた相内先生は、なんだか少しだけ怖いと感じてしまった。

愛よりお金を選んだ人。
確かに、世の中にはそんな人だって少なくはない。

でも……


「北島さんは、景のこと、何があっても好きでいられる?」

「え?」


今度は逆に問われた質問。

顔を上げた先には、じっと見つめる相内先生。



「景の父親のこと……分かってて、景を選んだのよね?私とのことも聞いて……。
 闘っていけるの?どんなことがあっても」



それはまるで、最終面接で詰められているような緊迫感があった。

母親ではないのに
母親に問い詰められているようにも見えるような……。


あたしは息を大きく吸い込むと……



「はい。たとえ自分を変えてでも……ケイを好きでいます」



揺らぐことのない瞳で、きっぱりと答えた。
 
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